「CPP-ACP」について　～初期虫歯の治療法

2019.5.28

　食事をすることによって口腔内環境は“酸性”に傾くため、「脱灰」といって歯の表面が溶けた状態になりますが、その後唾液の緩衝作用によって「再石灰化」が起こり、歯の状態が保たれています。しかし、この「脱灰」と「再石灰化」のバランスが崩れ、「脱灰」が優位な状態になってしまうと、いわゆる“虫歯”が発生します。

　歯の表面に完全な穴が開いてしまうと削って治さなければいけませんが、初期虫歯と呼ばれる、歯の表面がわずかに白く濁った状態であれば、一般的に削る必要はありません。初期虫歯は、歯の表面のわずかに内層でミネラル成分が溶出するために、白く濁って見えることが多く、表層下脱灰とも呼ばれます。この場合、歯の「再石灰化」を促し、溶出してしまったミネラル成分を供給することができれば、削らずに治すことができます。

　歯の「再石灰化」は、唾液の作用によって常に起こっているのですが、歯の表面がプラークなどで覆われているとそれが十分に起こらずに「脱灰」が進んでしまいます。したがって、ブラッシングを十分に行い、歯の表面からプラークを落として唾液が歯の表面に行き渡る環境にすることで「再石灰化」を促し、歯を健康な状態に保つことができます。

　また、「再石灰化」をさらに促す方法としては以前からフッ化物を塗布する方法が取られていましたが、近年では“CPP-ACP”が応用されるようになりました。

　CPP-ACP（カゼインホスホペプチド－非結晶性リン酸カルシウム）とは、オーストラリア・メルボルン大学のレイノルズ教授によって発見された牛乳由来タンパク質で、①歯の脱灰抑制（＝初期虫歯の発生を抑える）効果と②再石灰化（＝脱灰によって溶けてしまった歯のミネラル成分を回復する）を促進する効果、③耐酸性を向上する（＝歯を溶けにくくする）効果が国内外の研究によって実証されています。

　CPP-ACPは、歯の表面に付着した瞬間から再石灰化を促し、丈夫で健康な歯にするとともに口腔内を虫歯になりにくい環境にしてくれます。僕も大学院生のときに、この物質の脱灰抑制・再石灰化効果について研究する機会に恵まれ、学会発表等もさせていただきました。

　CPP-ACPは「リカルデント」とも呼ばれ、これが配合されている製品には、ガムタイプとペーストタイプがあります。

　歯科医院専売のリカルデントガムは、スーパーやコンビニ等で一般に販売されているリカルデントガムと比較してCPP-ACPが2倍含まれているため、さらに高い効果が期待できます。

　また、「MIペースト」というペーストタイプのものは、歯に直接塗布したり、歯磨き粉として用いることができます。とくに初期齲蝕が多発している場合に、専用のマウスピースを作製しMIペーストを内部に注入して、長時間歯に作用させる「再石灰化療法」を行う場合もあります。

　今回MIペーストに期間限定フレーバー“クリームソーダ”が登場しました。MIペーストで通常販売されているのは、ストロベリー、ヨーグルト、ミント、バニラ、メロンの5フレーバーですが、毎年期間限定でチョコレートやパイン、アップル、抹茶などのフレーバーが登場します。これらは即完売するほど人気がありますが、“クリームソーダ”は今回が初登場です。